この記事で分かること
- キーとキー溝の基本役割
- トルクに対するキーサイズの実務感覚
- キー長さの考え方
- 面圧・せん断のイメージ
- なぜキー溝が摩耗するのか
- サーボ化でキー問題が増える理由
- 実務でありがちな設計ミス
「このキーサイズで本当に大丈夫?」
機械設計をしていると、
- キーサイズはどう決める?
- キー長さはどれぐらい必要?
- キー溝が摩耗する原因は?
- なぜサーボ化で急にガタが出る?
- キーを大きくしたのに壊れるのはなぜ?
と悩むことがあります。
JIS表を見れば寸法は分かります。
しかし実際の現場では、
「このサイズ感、小さすぎない?」
という“実務感覚”が非常に重要になります。
特に最近は、
- サーボ化
- 頻繁停止
- 急加速
- 正逆転
が増え、
昔は問題なかったキー設計→今はトラブル化
するケースも珍しくありません。
この記事では、
トルクに対して、どれぐらいのキーサイズ感になるのか
を中心に、実務目線で整理します。
まず結論|トルク別 キーサイズ目安表
※一般産業機械の目安
※炭素鋼キー想定
※極端な衝撃なし
※連続運転想定
| 伝達トルク[N·m] | 軸径目安 | キー寸法目安 | キー長さ目安 |
|---|---|---|---|
| ~10 | φ10~15 | 4×4 | 10~20 |
| 10~30 | φ15~20 | 5×5 | 15~25 |
| 30~60 | φ20~25 | 6×6 | 20~30 |
| 60~120 | φ25~35 | 8×7 | 25~40 |
| 120~250 | φ35~45 | 10×8 | 35~50 |
| 250~500 | φ45~60 | 14×9 | 45~70 |
| 500~1000 | φ60~80 | 18×11 | 60~90 |
| 1000~2000 | φ80~100 | 22×14 | 80~120 |
この表の使い方
この表は、
厳密設計用
ではありません。
目的は、
「サイズ感がおかしくないか?」
を瞬時に判断することです。
例えば、
200N·m
なのに、
φ20軸キー5×5
なら、
多くの設計者は、
「かなり厳しそう」
と感じます。
逆に、
30N·m
しかないのに、
φ60軸18×11キー
なら、
「かなり余裕が大きい」
と分かります。
キーとは何か|まずは構造を理解する
キーは、
軸とボスを回転方向に固定し、トルクを伝達する部品
です。
例えば、
- プーリー
- スプロケット
- ギヤ
- カップリング
などで使われます。

キーは「回り止め」であり「位置決め部品」ではない
ここは非常に重要です。
初心者の頃は、
キーが芯出ししている
ように感じます。
しかし実際には、
キーは回り止め
です。
芯出しや同軸度は、
- 軸とはめあい
- インロー
- ベアリング精度
- 端面当たり
で決まります。
つまり、
キーだけで位置決めしようとすると精度トラブルになりやすい
わけです。
なぜキーが壊れるのか
キーには主に、
- せん断力
- 面圧
が発生します。
せん断破壊
キーが横方向に切れる状態。
面圧破壊
キーやキー溝が押し潰される状態。
実際の現場では、
せん断より面圧で摩耗する
ケースがかなり多いです。

実務では「軸径→キー」ではなく「トルク→キー」で考える
教科書では、
軸径→キー寸法
で説明されます。
しかし実務では、
必要トルク→軸径感覚→キーサイズ感覚
で考えることが非常に多いです。
つまり設計者は、
「このキー、小さすぎない?」
という違和感を先に見ています。
モータ出力から見るキーサイズ感覚
実務では、
モータ容量
からだいたいの軸径感覚を持っています。
| モータ出力 | よくある軸径 | よくあるキー |
|---|---|---|
| 0.2kW | φ12~15 | 4×4 |
| 0.4kW | φ15~20 | 5×5 |
| 0.75kW | φ20前後 | 6×6 |
| 1.5kW | φ25前後 | 8×7 |
| 2.2kW | φ30前後 | 8×7 |
| 3.7kW | φ35前後 | 10×8 |
| 5.5kW | φ40前後 | 12×8 |
| 7.5kW | φ45前後 | 14×9 |
| 11kW | φ50~55 | 16×10 |
キー長さは「長ければ良い」ではない
初心者が誤解しやすいポイントです。
確かにキーを長くすると、
- 面圧低下
- せん断応力低下
になります。
しかし実際には、
- 軸断面欠損増加
- 軸強度低下
- 加工コスト増加
- 組付け悪化
- 偏当たり
も発生します。
そのため実務では、
キー長さ ≒ 軸径前後
ぐらいがよく使われます。
サーボ化でキー問題が増える理由
最近かなり増えているトラブルです。
昔の設備は、
- 一定回転
- 起動停止少ない
- 慣性大
でした。
しかし現在は、
- 急加速
- 急減速
- 頻繁停止
- 正逆転
が増えています。
その結果、
昔は問題なかったキー→急に摩耗・ガタが発生
するケースがあります。
よくある失敗例
① キーだけ大型化する
軸径そのまま→キーだけ大型化
これは危険です。
理由は、
キー溝が深くなり軸断面が弱くなる
からです。
② ボス長さ不足
既製品プーリーで多いです。
ボス短い→接触面積不足→面圧増加→摩耗
という流れになります。
③ キーだけで位置決めしようとする
キーはあくまで、
回り止め
です。
高精度位置決めは、
- はめあい
- インロー
- 基準面
が重要になります。
設計者は「違和感」を見ている
実務では、
感覚で仮決め→強度計算で確認
という流れが多いです。
つまり計算は、
「このサイズ感で本当に成立するか?」
を確認するために使われています。
まとめ
キー設計では、
JIS寸法をそのまま使う
だけでは不十分です。
実際には、
- トルク
- 軸径
- キーサイズ
- ボス長さ
- 運転条件
- 将来摩耗
をセットで考えています。
特に重要なのは、
「このトルクでこのキーは小さすぎないか?」
という実務感覚です。
まずは、
トルク→軸径→キーサイズ
の感覚を持つことが、実務設計では非常に重要になります。